モビルスーツ対戦車


[ランバ・ラル隊作戦室にて]
「ラル大尉、アコースが戦車を発見しました。博物館行きの代物ですが、 戦力の足しになればと思い...」
「ホウ、動くのか。」
「はい、現在整備兵がチェックしておりますが状態は良いようです。砲はザク と同じ120mmなので、最悪砲塔だけでも即席ライフルとして使えるかと。」
「アコース、発見当時の様子を報告せよ。」
「はっ。廃虚となっていた倉庫で見つけました。 牽引しようとしたのですが、 ひどく重くてザクの力では無理でした。 ギャロップの協力でようやく回収できたのであります。」
「重いというのはどれくらいかね。」
「はっ、大きさはザクの片足程度なのですが、60トン以上あるようです。」
「ラル大尉、整備兵からの報告です。」
「砲塔だけでも10トン以上あり、ザクの腕で抱えて砲操作するのは無理です。 車体の操縦は容易なので、このまま使うのが良いかと思われます。 燃料は石油系でした。ギャロップのホバージェット用燃料の添加剤を調整して 使います。砲弾は不思議な形状のモノが4発ありました。 このままでは砲弾が不足するのでザクマシンガンの砲弾を加工して 流用します。薬莢形状の加工と 装薬量の調整で使用可能になると思われます。FCS(火器管制システム)は原始 的ですが、電子化されたものが装備されておりました。 システムの全プログラムとデータをギャロップのコンピュータに取り込んで解 析し、操作に必要な情報を得ました。 それを元にマニュアルを作成しました。 モビルスーツのパイロットならばすぐに操作に慣れると思います。」
「ご苦労。パイロットは何名必要かね。」
「キャプテン、ドライバー、ガンナーの3人が要ります。 自動装填装置が故障したときのために、 ラジオオペレーター兼チャージャーも必要です。 本来は4人乗りだったようで、シートも4席ありました。」
「よし、MSのないコズンがガンナーをやれ。 ドライバーはステッチ、ギーンはラジオオペレーターだ。 ミノフスキー粒子のせいでそうそう通信はできんだろうがな。」
「了解です。キャプテンは誰でしょうか。」
「もちろんワシじゃよ。グフを失って困っておったところだ。後方で指揮をと るのは性に合わんでな。」

[オデッサ東方砂漠地帯]
「よし、ザクとギャロップはこの位置で固定。指示があるまで待て。偵察に出る。」
「ラル大尉、単独では危険です。」
「なに、この小さい車体では目立ちはせんて。」

「木馬だな。発進準備をしている。連邦の本隊と合流する気のようだ。 こちらには気付いてはおらんな。 アコースとタチを呼べ。後方から攻撃をかける。」
「アコースは木馬の攻撃に集中せよ。タチは後方からアコースの援護だ。 モビルスーツが出てきたらワシにまかせろ。」
「ラル大尉、戦車一台では危険です。」
「なに、対MSミサイルで白兵戦を仕掛けるよりは遙かに安全じゃよ。 しかもこちらは的が小さい。そうそう弾が当たるものではあるまい。」
「了解であります。ご武運を。」
「さて、白いモビルスーツ。グフの敵を取らせてもらうぞ。攻撃開始せよ。」
ザクマシンガンの弾と120mm戦車砲弾がホワイトベース後部に命中する。 ダメージは小さいらしく、そのまま上昇旋回を始めた。 前部ハッチからガンダムとガンキャノンが発進して地上に降り立った。
「よし、まずは赤い方をやるぞ。コズン、腹を狙えるか。」
「ラル大尉、こいつのFCSは驚異的です。 光学式なのでミノフスキー粒子の影響をまったく受けません。 目標の移動にも自車の移動にも対応しています。」
「赤いモビルスーツまで距離2100m。 敵は我々より後方のアコースのザクに気をとられていて こちらには気付いていないようです。いつでも撃てます。」
「よし、撃て!」
戦車砲弾はガンキャノンに命中するが爆発しない。
「不発か。いや、弾が向こうに抜けたのか。 ザクと同じ120mmとは思えんな。次はキヤノンの付け根を狙え。」
「了解。ファイア!..命中!」
ガンキャノンの肩部で爆発が起こる。
「よし、赤いモビルスーツをやったぞ。おっと、白いモビルスーツに見つかっ たようだ。突っ込んでくるわい。アコース!この隙に木馬に取り付け。木馬は 後方には大した武器は付いていない。後方から攻めよ。」
「了解であります。」
アコース機がホワイトベースの後方に回り込むために右へ離れて行く。その直 後、ガンダムが戦車を狙ってビームライフルを発砲した。
バンッ!戦車の砲塔前面がまぶしく輝いた。
「直撃か!みな無事か?被害を知らせよ?」
「ラル大尉、こいつは白いやつのライフルをうけつけません。すごい!」
「よーし行けるぞ。コズン狙えるか。」
「はい、FCSは白いやつの動きに追従しています。これ以上近づける と砲の仰角限度を超えます。」
「よし、撃て!」
戦車砲弾はガンダムのシールドに命中し、そのまま貫通して左腕にめり込んで 爆発した。左腕がシールドごと肘の関節から脱落する。しかし、ガンダムの動 きは衰えない。
「まだ来るぞ!敵に正面を向けたまま全速後退。次は腹を狙え!」
「了解。」
ガンダムの上下方向の激しい機動により射撃は外れる。
「ちい、外した!」
ガンダムは右手のライフルを投げ捨て、 ビームサーベルを抜いて戦車の真上から降ってきた。
「ステッチ!右キャタピラ停止!」
戦車は右キャタピラを中心に信地旋回した。 車体があったはずの場所にサーベルが突き刺さる。 戦車は180度向きが変わって後退すればガンダムの後ろをとれる向きになった。
「全速後退!コズン足を撃て!」
ビームサーベルを地面に突き刺して、しゃがんだ体制になっているガンダムの 脛の部分に砲弾が命中。しかし、貫通しない。
「オリジナルの弾は弾切れか。ザクマシンガンの弾では奴の 装甲を抜けん。コズン!関節を狙え!」
ガンダムが立ち上がって振り向いたところに砲弾が命中。膝関節を破壊した。 ガンダムはその場から動けなくなったが、頭部60mm砲を発砲した。 ゴンゴンゴンゴン。戦車前面に砲弾が次々と命中する。 全部弾き返されているが、一部の砲弾は砲塔上部をかすめて 車体後部に命中し、ラックの空の予備燃料タンクを吹き飛ばした。
「ステッチ!全速で後退!距離をとれ。小口径でも上部から撃たれるのはまずい。 コズン!撃ちまくれ。破壊できなくとも、 白い奴のパイロットを追い出して盧獲するぞ。」
ドスン。戦車の横に砂煙があがった。
「何だ!?木馬の主砲か。いや、戦車モドキが大口径砲を木馬の上から 撃ちおろしているな。撃ち返すには砲の仰角が足りんぞ。 アコースどこだ。何をしている。」
「ラル大尉、何とか無事ですが、マシンガンは弾切れです。」
ドン、戦車のすぐ横に着弾した。
「そうそう当らんとは思うが、まぐれでも上部にくらうとまずい。 くそ、止むをえん。後退する。」
「あと一息で白いモビルスーツを盧獲できたものを。 まあ良い。オリジナルと同じ弾があれば、 連邦のモビルスーツと互角に戦えることが分かったからな。」

その後の一年戦争

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ガンダムの嘘ボトムズの本当