和三盆糖の製糖はたいへんな重労働です。
通常、砂糖は工業的にショ糖以外の成分を取り除いて精製されますが、
和三盆は中世(江戸時代)より日本で作られており、製糖の過程を人力で行います。
現代も往事のままの作り方です。
精製度を上げるため、何度も蜜搾りを行います。
30kgの岩を両手に持ち、大きな梁のような棒を担いだ姿勢で重しをかけ
粗糖から余分な蜜を絞り出すのです。
製糖度は90%近く、手作業でこれだけの純粋な砂糖を作る所は他にありません。
蜜のアクが抜けた砂糖は軽く、舌に染みこみます。
とはいえ、微量な蜜分が残り、ミネラルも含んでいます。
それが独特の風味を生み出します。
この風味は熱を加えると失われますので、焼き生菓子には和三盆の香りはありません。
香りのあるお菓子は絞った蜜(廃糖蜜)を再添加したり、表面に砂糖をまぶして香りをつけています。
正凜堂の和三盆かすてらには和三盆の香りはありません。
生地に完全に合わせて焼き上げるからです。
しかし、和三盆を多めに使用するため、しっかりと和三盆の味があり、後口が涼しいのです。
たいへんな苦労をして絞り出した余分な糖蜜を再添加するなどということはしていませんので
雑味やアクはなく、上質の和三盆のふんわりと軽い風味そのままの味です。
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