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EP7名場面集


・「理解しようとするな。頭痛にならァ。」


・「九羽鳥庵以前から、二重生活はお手の物だったというわけだ。・・・・・・・・・サッ。」
・「何をしてるんですか・・・? おしりにおできでも?」
・「・・・・・・ちっ。」

・「……こんな具合ですが?」
 「楼座以外には興味ねェ、んぐッ、」

・「それは失礼。どうぞごゆっくり。」
 理御は優雅に会釈をしてから、アッカンベ~と、舌を大きく出す。


「う、うぜーぜ!私は私らしく生きてらぁ!次期当主サマみてぇにお上品に生きてたら、息が詰まっちまわぁ・・・!
ひィッ?!痛い!痛ててたたた!!やめてッ、つねんないでッ!
妹虐待ッ、変態ッ、反対ッ、痛い痛い!」


「申し訳ございません。受付を空けることは許されておりませんので、私には呼びに行くことが出来ません。」
「なら、誰か代わりを呼んできて受付を代わらせる。あんたと嘉音と俺。……理御を知らない三人で、一緒に、話がしたい。」

「…………………………………。」
「…………………………。」

「……受付は1人でいいと、仰せつかっております。」
「2人いちゃいけねぇとは言われてねぇはずだ。」

「本日は人手が足りませんので、受付に2人も不要と仰せです。」
「誰がそう命じた。金蔵か。蔵臼か。それとも理御か。確認する。」

「私の、命令権者です。私は命令に、逆らえませン。」

「その命令権者は誰だ。そいつに交渉する。」

「交渉など、デキマセン。私たチの、命令権者デス。」

 空気がゆっくり凍る…。

「ここへ嘉音を呼べ。……俺は拷問も観劇も嫌ェだ。」

 ウィルはゆっくりと、……ポケットから右手を引き抜く。
 その右手の拳をゆっくり開くと、………そこには、小さく眩しい輝きが放たれている。
 ベルンカステルが与えた、あの花びらが光る痣となって、輝いている……。
 その手を紗音にかざし、……ゆっくりと近付いていく。

「嘉音を呼べ。お前たちに確かめたいことがある。」
「オ呼ビデ キマセン。ソレデモナ オ、ソレヲゴ希望デ スカ……?」

「呼ばねぇなら、お前を“観劇”する。」
「ドウシ テモト仰 ルノデシタ ラ、……特 別ニオ 呼ビス ルコ トモ出 来マ ス  ガ   ?」

「…………………………。」
「               。」

 二人の間に、理解不能な緊張が張り詰める。

 ウィルは、左手をポケットに突っ込んだまま、輝きを見せる右手の手の平をかざして立つ。

 紗音は、両手を行儀良く前で組んだまま、……美しい姿勢でただ、立っている。
 なのに、……風雨の雨粒が、宙で弾けるような錯覚さえ、覚えてしまう……。

「嘉 音ク  ン  ヲ、  呼  ンデ マ イリマ   ス ガ。
  ヨ  ロ シ イデ      ス    カ      ?」

「……………………………。」

 ウィルの顔は、最初から何も変わらない。
 紗音の顔も、やさしく、穏やかなままだ。
 なのに、緊張感が、凍結した湖面のように張り詰める…。

 ……チェスの初心者は時に、不注意にも、相手の射線に気付かずに、そこへキングを動かしてしまうことがある。
 それを容赦なく取っても良いが、……上級者はそれをさり気なく教えてやるべきだ。
 もう一歩、踏み込むと、……取られてしまいますよ、と。
 これは、……それに、……似る………。

「……………………………。」

 ……なるほどな。 やはり、か………。

「もうわかった。充分だ。………二人で交代で、受付を頼む。」


『お願い、金蔵。……迎えが来るまでの数日間でいいから。……私をさらって。』
『………その願いは、……叶えられない。』
 金蔵は残念そうにそう言いながら、ベアトを抱え上げ、やさしく船に乗せる。
『……意気地なし。……やっぱり日本の男は軟弱だわ。』
『そうだな。……私は意気地なしだ。だから君の願いは、片方しか叶えられない。』
 ゴトリと、重い音をさせて、上着に包んだそれを船に積む。
『片方とは……?』

『迎えが来るまでの数日間でいいから。……の方は、叶えられないということさ。』

『………え? どういう意味?』

『君をさらう。……そっちを叶えることにした。』


『君は、魔女だな。……黄金の魔女だ。』
『くす。えぇ、黄金の魔女よ。みんなと同じレシピで作ってるのに、私だけがパスタから消し炭を生み出す錬金術が使えるの。』


『……あなたと同じく私も、あなたが居てくれる限り、生きることを許される屍。……あなたがいなくなったら、私はすぐにでも死んでしまう。』

『死なせない。』

『本当に?』

『絶対に。』

『取ってね、責任。………だってあなたは、私をさらったんだから。』


「推理を続ける。……死んだ猫の話はした。」
「そうね。次は、生きた猫の話だわ。」
「1986年のベアトリーチェを殺せるのは、それを生み出したヤツだけだ。」
「ヒントは山ほどあったわ。思えば、ベアトリーチェのゲームだった頃からね。」
「そうだな。……ベアトリーチェと戦人の第4のゲームで、その因縁ははっきりとした。そしてその時点で、ベアトリーチェが誰であるか、そしてその心が、わかった。」
「心とは?」
「……動機だ。……ベアトリーチェが、1986年10月5日に、自らの運命さえ賭す、ゲームのような事件を起こさねばならなかった、動機だ。」
「さすがだわ。第4のゲームの時点で、フーダニットとホワイダニットが推理できてたなんて。……じゃあハウダニットは?」
「犯人が誰であるかわかれば、それを推理することは不可能じゃない。第3のゲームの連鎖密室は、なかなか器用にやったもんだと拍手さえしたくならァ。」
「第4のゲームラストの、私はだぁれ?、はわかった……?」
「10月5日24時に必ず、場所を問わずに、殺せる”犯人”。その時点である種の仮定は可能だ。……それこそ、黄金郷のもう一つのお宝、ってわけだ。」
「……へえ。第4のゲームまでに、……即ちあなたは、ベアトのゲームだけで、全ての答えに至れたと?」
「可能だ。…その後の、ラムダデルタのゲームと戦人のゲームは、それをさらに補足するヒントの塊だ。……この、お前のゲームさえもな。」
「くすくすくす……。……それでは、そろそろ、はぐらかすのは終わりにして教えてちょうだい? ………犯人は、だぁれ……?」

その時、……彼ら以外、誰もいないはずの礼拝堂に、小さな足音が響く。
その人影は、ゆっくりとウィルたちの前に来て、小さく会釈をした。

「……来たか。」
「呼んだの?」
「ああ。フーダニット、ハウダニット。そしてホワイダニット。……こいつの動機を、理解した。」
「……”あんた”、動機がわかられただけで、もう降参しちゃうの…?具体的な証拠はないんでしょ?赤とか青とかで、ガンガンと派手に応酬すればいいのに。」
「こいつは、もうそんなことは望んでない。」

その人物は、小さく頷く。
望みは、……気付いてもらうこと。
それが達せられた時点で、もう、下らぬ言葉遊びで、言い逃れを図るつもりはない…。

「俺はお前の動機を,……心を理解したつもりでいる。……それをこれから、話す。お前を呼んだのは、それを聞き、……間違いがあったら、お前の言葉で正して欲しいからだ。」
「………………………。」
ウィルたちは、……互いにもう一度、小さく頷きあう。

「お前の4つのゲームで、お前のメッセージを受け取り。…そしてマスターの違う3つのゲームで、
俺はお前をどんな不遇な運命が弄んだか想像し。……言葉を失った。…お前はそれを、誰にも明かさずに、全てのゲームで死ぬ。」
それを、この誰もいない礼拝堂で告解させても、何の意味もないかもしれない。

しかし、それでもそれが、……何かの救いになると、俺は信じる。
人は、誰かに理解されて始めて、救われる。
死後も何年経っても、……そして、一番判って欲しかった男に、理解されること無く生を終えた哀れな魔女を、……………もう誰かが赦してもいい。


・「………聞け。我こそは我にして我等なり。我が語るは我等の物語。されど此処は聞く者無き硝子とコルクに封ぜされし小さな世界。それは誰の目にも触れることなく、我が物語の全てを封じて、我が心の海を揺蕩いて海の藻屑と消えていく……。」


「ここにこうして、200億円の山があるのに。どうして3億ぽっちで納得しなきゃいけないのよ。」
「ろ……、楼座ぁぁ……ッ、」
 苦悶に表情を歪める絵羽に対し、……楼座は冷た過ぎるほど淡々とした表情で告げる。
「いいじゃない。別に何十年も食らい込むわけじゃない。だって事故なんでしょ?
ほんの数年で出て来られるわよ。……罪を償って綺麗になって戻ってきたら、姉さんの分の黄金、50億を好きにすればいい。」
「別にいいじゃない、会社なんて。50億あるんだから、もう働くのも馬鹿馬鹿しいんじゃない?」
「大人しく自首しなさいよ。そうすれば、不幸な事故がたまたま重なったことで済ませられるわ。
無論、刑期だって大したことはない。……譲治くんのことは安心して。私たちでちゃんと面倒を見ておくわ。
姉さんの取り分の50億はきっかり、手付かずで残しておいてあげるから安心して。」
「銃を下しなさい、姉さん。頭を冷やせば、私の提案が最善だとわかるはず。
……いいじゃない、刑務所。経済行為で考えてみて?」
「仮に10年食らうとしても、釈放されれば50億が待っている。それって、年収5億のお仕事ってことでしょう?
そう思えばお勤めも楽しくなるんじゃない?」
「嘘だわッ!!! あんたはその間に私たちの取り分も取って逃げる気よッ!!
あんたの男がそうしたようにねッ!!!」
「うッ、うちの人のことは関係ないでしょッ?!?! 私は逃げないわよッ、お金を持ち逃げなんてッ、
絶対に、……ぅぉお、絶対にしないわよぉおおおおぉおおお!!!」


「ずっと、………いてね?
「ずっと。……私の好きな留弗夫さんのままで、……いてね?」

「……女の顔を殴ることに関しちゃ。叔母さん、慣れてるのよ。ごめんね。………抵抗しないでくれたら、綺麗な死に顔にしてあげられたのにね。」


「……私にはわからないわ。あなたも、自分のお腹を痛めて子を生んだ経験を持つ、母のはず。命の尊さを、知らないわけがない…! そのあなたがどうして、これだけのことが出来るの…!」
「子供なんて。寝れば勝手に出来るわ。」
「そういう話じゃないでしょ…!!」

「子はかすがい、って言うわよね。」
「それが何?!」

「子は、夫を繋ぎ止めておくための、かすがいなのよ。……留弗夫さんに、私のことを認めさせ、あの女から彼を取り戻すための、かすがいだった。」

「でも、留弗夫さんはあなたが殺したわ。だったら、………わかるでしょう?」
「わかるって、……どういう意味!」

「私はもう。誰かの妻でもないし、母のつもりもない、ということよ。……私は私。霧江。留弗夫さんが死んだ今、右代宮でさえないわ。私は私の、得になるように生きる。」
「そうね、留弗夫は死んで、あんたは妻ではなくなったかもしれない。でも、縁寿ちゃんがいるでしょう…?! あんたはまだ、母であり続けるはずよ…!」
「言ったでしょ、かすがい、って。留弗夫さんがいなくなった今、縁寿は私にとって、必要なものじゃないわ。」
「……あ、……あんた……、それが、母親が子に対して言うことなのッ?!」

「絵羽姉さん。やめましょうよ。綺麗事は。」
「綺麗事…?!」

「私たちって、子供が欲しくて結婚したの? 違うでしょ? 好きな男と一緒に暮らしたいから、結婚したんでしょ? そして、結婚したんなら、その男を一生、手放したくないと思うでしょ? 子供は、そのための武器じゃない。」
「そんなこと考えて、子供作ったりなんかしないわよ…!!」
「そんなこと考えて、子供を作ることも出来るのよ。」

 霧江は雨に打たれるのも気にせず、淡々と続ける……。
 その表情は、……変わることなく、悠然とした笑みが浮かび続けていた。

「縁寿なんて、留弗夫さんを縛り付けるための、ただの鎖。……あるいは、家族ごっこをするための、子供の役という名の駒。
……私にとって縁寿は、留弗夫さんの前で良き母を演じる時に必要な駒なだけよ。」
「……あんたッ、……それを縁寿ちゃんの前で言える?!」
「さすがに気の毒だから、本人には言わないわ。悪いお母さんを許してね、とでも書いて、姿を眩ますつもり。楼座さんと真里亞ちゃんを見ればわかるでしょ? 留弗夫さんがいない今、縁寿なんて私を縛る鎖なだけ。」

「……私は元の、たった一人の霧江に戻り、のんびりと余生を楽しむつもりよ。新しい挑戦、新しい人生。
ひょっとしたら、新しい恋もあるかもね? くすくす…………。」
「……それでも人間なの……。……それでも縁寿ちゃんの母なの?!」

「くすくすくす。
縁寿なんか知ったことじゃないわよ。あんな、クソガキ。可愛いと思ったことなんて、一度だってないわよ。」
「……あ、……あんたって人は……。」

「あなただって、もう、家族ごっこから解放されたでしょう?
 謳歌しましょうよ、女の自由を。感謝してほしいわ、譲治くんも、殺してあげたんだから。」

「こッ、……この、………人でなしがぁああぁああぁあぁ!!」
「あっはっはははハっはヒャっはハぁあぁあああああああぁああぁあッ!!!」


「……………………………。……ごめん、………ウィル………。……もう、……体が…………。」

 理御はとうとう、……激痛に、……自分の運命に屈して倒れる……。

 その体が、乱暴に後ろから抱えられ、担ぎ上げられる。

「…………ッ!! ……ウィ、……ウィル……!! 無事で………!」
「割とそうでもねェ。……挫けるんじゃねェ、尻を抓るぞと言ったはずだ。」

「……ごめんなさい、……本当にごめんなさい……。……でも、……私はあの日、あそこで、殺される運命だった……。」
「そうだな。人は誰だって、最後には死ぬ運命だ。なら、その人生は全て無意味なのか?
 違うだろ。人生の意味も、価値も、人生そのものすらも、人が自分で描くんだ。……押し付けられた運命が何だってんだ。受け容れるな。世界はお前が紡げ、自らで…!」

「………ウィル、……あなたの、左腕……!」
「あぁ、……忘れてきちまった。取りに帰るのも億劫だ。」

 ウィルの全身はズタズタに引き裂かれていた。
 そして、左肘から先は無残に引き千切られ、服もぼろぼろで、……まるで血塗れのかかしのようだった…。
 そして気付く。
 空も足元も、満点の星の海だと思っていたのに、……その星々がいつの間にか群れて集まり、自分たちを取り囲んでいる…。
 それらの星は、皆、偶数個ずつ並んで二人を睨みつけていた…。
 片腕で理御を抱え上げている。刀は抜けない。

 しかしウィルは理御を下ろさない。

 ……絶対に理御を、ここから逃げ延びさせ、ベアトリーチェたちが夢見た、幸せな物語に辿り着かせる。

 虚無の闇に瞳を輝かせる猫たちの群の向こうに、奇跡を許さぬ猫の女王が姿を現す……。

「………ウィラード。理御を下ろしなさい。そしたら、あなただけは見逃してあげるわ。」
「書面で大法院に出せ。審議してやるぜ。」
「………ウィル、……私を、…………。」

「置いては行かねぇぜ。……お前に教えてやる。どうして俺が、SSVDを辞めるのかをな。」
「……そう言えば、私も知らないわ、それ。……どうして?」
「クソッタレな、お涙頂戴のミステリーばっかりに飽きたからだよ。………ハッピーエンド上等、逃げ延びてやるぜ。」

「俺が教えてやるんだよ。バッドエンドしかないと絶望して死んだベアトリーチェに、ハッピーエンドもありえるんだって教えてやるんだ。だから絶対にお前を、下ろさねェ。」
「………………ウィル……。」

「猫ども、左の二の腕もくれてやるぜ。欲しけりゃ両足もくれてやる。
……だがな、絶対ェに理御だけは放さねェ。……俺が、這ってでもこいつを、お前というバッドエンドから逃してやる……!」

「いいの、理御? ウィルは、あんたを庇って死ぬ気よ? 嫌でしょう? 私なんか放って逃げて下さいって、お言いなさいよ。」

「……………ウィル……。」

「おう。」

「……私を、…………放さないで下さい……ッ。……逃げ延びます、絶対に! そして、あなたも…!!」

「それでいい。」

 その言葉に、ウィルは理御は力強く抱きかかえる。

「というわけだ。足掻くぜ、ベルンカステル。」
「私たちは、奇跡を諦めない…!!」

「絶対に奇跡は訪れないと奇跡の魔女が約束したのに、それをよくも口に出来たこと。
………くすくすくす、うっふふふっはっはっはっははははははッ!!
 さよなら、二人とも。忘却の深遠で死すら迎えられずに、埃に降り積もられて消え去りなさい!!」


「さぁ、ベアトのゲーム盤の駒たち……? 私を最高に楽しませる、最高に残虐な物語を紡がせてあげるわ。慄きなさい、約束された絶対の運命を。……奇跡の魔女、ベルンカステルの名において。……そして、ベアトのゲームの、最後のゲームマスターとして宣言するわ。」

「……ただ宣言するだけじゃつまらないわね。……ベアトのゲームに則って、赤き真実で宣言してやった方がいいかしら?」

「それがいいんじゃない? まだ甘い夢を見てる魔女どもも、いるみたいだし。」
「あら、ラムダ。いたの? いるわよね、私のいるところなら、どこへでも。」
「言ってやりなさいよ。甘い夢みてる魔女どもに。」

「えぇ、そうするわ。……奇跡の魔女として、そして、最後のゲームマスターとして、最後のゲームを宣言するわ。そして約束する。」

このゲームに、ハッピーエンドは与えない。


シクシク。……シクシク、シクシク……。

少女が一人、……無人の、静寂の礼拝堂で、泣いていた。

それは小さな少女。……6歳の少女。

1986年の10月4日に、5日に、……島にいられなかったことを、これから12年にもわたって嘆く、悲しみの少女……。

そこへ、………一人の男がやってくる……。

男は少女の姿を見つけ、……怖がらせないように、静かに歩み寄り、……そっと、その肩を抱いた……。

「………お兄ちゃん…………。」

「探したぞ、縁寿……。」

少女は、兄の胸に飛び込み、再び泣いた…。

「どうした。……何をそんなに悲しんでいるんだ。」

「今日、クラスの子にいじめられたの……。テレビで、お母さんは悪い人たちと繋がりがあったって。………だから、うちのお父さんとお母さんが犯人で、みんなを殺したんだろうって……。……絵羽伯母さんに、そんなことないよねって聞いたのに、答えてくれないの……。……お父さんとお母さんは悪くなんかないよね? ね…?」

「可哀想に……。……みんなが、あの島で、あの日なにがあったかを、好き勝手なことを言ってるんだな…。……そこにお座り。」

「…………うん…。」

男が床を指差すと、そこの黄金の蝶たちが集まり、椅子を作る。
少女は素直に、それに腰掛けた……。

「……お兄ちゃんは知っているよね? お父さんとお母さんは悪い人じゃないって、知ってるよね?」

「あぁ。もちろんだとも。……誰も悪い人なんかいないって、知ってるさ。」

「じゃあ、教えて。あの日、何があったの? 六軒島で何があったの?」

「いいとも。………話してあげるよ。あの日、あの島で何があったのか。」

「それは、……怖い話……?」
「まさか。」

「それは、悲しい話……?」
「とんでもない。」

「それは、……どんな話……?」

「聞いた縁寿が、自分で決めるといい。決して辛い話じゃないんだよ。だからお聞き。」
「うん。戦人お兄ちゃん……。」

「あの日、お兄ちゃんたちは六軒島へ行ったんだよ。とても大勢でね。大事な親族会議があることになってたんだ。………まずは、どこから話したものかな。」

これが。
縁寿に捧げる、最後のゲーム。

お聞き、縁寿。

あの日、六軒島で、何があったのか。

これは、辛い話でも、悲しい話でもないんだよ………。