【3月29日 AFP】内戦で荒廃したシリアを逃れた500万人近い難民のうち、富裕国がこれまでに受け入れたのはほんのわずかにすぎない──。英非政府組織(NGO)「オックスファム(Oxfam)」は29日に公表した報告書でこう指摘し、富裕国に難民の受け入れ拡大を要請した。

 シリアの周辺諸国で難民登録している人の数は480万人に上る。オックスファムによると、富裕国が表明した第三国定住枠は13万人分にも満たず、また実際に最終目的地の国にたどり着いたシリア難民は2013年以降でおよそ6万7100人と、全体のわずか1.39%にとどまっている。

 オックスファムは富裕国に対し、難民登録した480万人のうち少なくとも10%の再定住を進めるよう呼び掛けている。

 報告書は国連(UN)が30日にスイス・ジュネーブ(Geneva)で主催する会議に先立って公表されたもので、会議では各国に対し、シリア難民の再定住枠の表明が求められる見通し。

 報告書は「弱い立場に置かれた難民の再定住枠を増やすべきという要請に対するこれまでの反応には落胆を禁じ得ず、会議がこの傾向に変化をもたらす機会になれば」と述べている。

 また、分析の結果、世界の富裕国のうち、経済規模からみた「相応の分担」以上の再定住枠を表明しているのはカナダ、ドイツ、ノルウェーの3か国だけだと指摘。相応の分担の半分を超える再定住枠を示している国もオーストラリア、フィンランド、アイスランド、スウェーデン、ニュージーランドの5か国にとどまり、残る20か国については、それをはるかに下回っているとしている。

 オックスファムのウィニー・ビヤニマ(Winnie Byanyima)事務局長は声明で、「シリアの人々に対し、『連帯心』は行動で表すものであり、口先だけのものではないということを示す必要がある」と述べ、「強い経済力、優れたサービス、進んだインフラを持つ国々は、すぐにでも計50万人の難民を再定住させることが可能だ。もしその気さえあれば、ということだが」と指摘した。(c)AFP/Nina LARSON