デイヴィッド・ケイ (法学者)

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デイヴィッド・ケイ
David Kaye
デイヴィッド・ケイ、2015年6月
人物情報
生誕 カリフォルニア州ロサンゼルス
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
出身校 カリフォルニア大学バークレー校[1]
学問
研究機関 カリフォルニア大学アーバイン校[1]
学会 アメリカ国際法学会
公式サイト
デイヴィット・ケイ(カリフォルニア大学バークレー校)
脚注
日本語表記については、国際連合広報センターではディビッド・ケイ報道ではデビッド・ケイ[注釈 1]デービッド・ケイなどとも表記される。 
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デイヴィッド・ケイ英語: David Kaye)は、アメリカ合衆国法学者カリフォルニア大学アーバイン校教授[1]。デビッド・ケイ、デービッド・ケイと表記されることもある[2][3]

来歴[編集]

カリフォルニア州ロサンゼルス出身[4]。1990年、カリフォルニア大学バークレー校法学部卒業。ファイ・ベータ・カッパ成績最優秀者の友愛会)所属[5]

1992年の上半期、国際人権局特別特派員として、旧ソ連モスクワドゥシャンベアルマトイビシュケクタシケントで前政権と比較し、変化する政治制度影響の調査、分析、報告を担当。

1995年から弁護士として法律事務所に勤務[5]。2001年の1年間、アメリカ合衆国国務省特別補佐官の法律顧問を担当。2002年からハーグの在オランダ大使館の副法律顧問を2005年迄担当[5]

其れと平行し、2002年にジョージタウン大学ローセンターロースクールの准教授として、国際人道法セミナーを担当。2005年の秋から、カリフォルニア州オレンジ郡コスタメサウィッター・ロー・スクール英語版、の助教授として訪問授業を2007年夏まで担当。

2012年の夏、カリフォルニア大学アーバイン校にて国際人権法国際人道法の教鞭に立っている[1]2014年8月から、国際連合言論の自由表現の自由に関する国連特別報告者の任に就いている[1]

活動[編集]

  • アメリカ国際法学会英語版会員 「ASIL Insights」共同編集者、(2009年から2013年)、執行理事会(2010年から2013年)、エグゼクティブ委員会(2010年から11年)、プログラム委員、2010、2013年の年次総会、2011年の中間年会
  • シリアの市民社会と民主主義センター、諮問委員会
  • 外交問題評議会会員[1]
  • 国連特別報告者として、

国連特別報告者提言に関する反応[編集]

2016年日本に対する提言について[編集]

批判
  1. ケイが国連人権理事会にて演説及び提出した報告書の中に、沖縄の普天間基地移設反対に関する抗議活動へのデモ規制を問題視する内容があることについて、「琉球新報、沖縄タイムスを正す県民・国民の会」代表運営委員の我那覇真子は「(ケイ氏は)私のレポートは沖縄がメインではなく、一部に過ぎない-と前置きをしていて今回の調査では沖縄に行っていないし、これからも行く予定はないと答えていました」と主張し、産経新聞は「きちんとした調査は行われていなかった可能性が高い」と書いている[10][11]
  2. 「不当な日本批判を正す学者の会」の事務局長で大阪市立大学名誉教授の山下英次は、ケイの報告について、「外国人を含め日本に住むほとんどの人にとって、現実と大きくかけ離れている」「国内外の一握りの過激な『反日』論者の影響を強く受けているようだ」として、国連人権理事会に対し、ケイの報告を受理しないよう要求している[12]
  3. 自由民主党衆議院議員の長尾敬は、ケイが2016年6月に訪日した際、他の数人の議員と共に面会し、特定秘密保護法の詳細や沖縄における法執行の現状などについて説明をおこなった。長尾は、ケイが説明に対し、日本では言論・表現の自由が高いレベルで保障されていると評していたとして、報告書の厳しい対日批判の文章との乖離には違和感を覚えると述べた。また、ケイが沖縄を訪れた経験が無いことが判ったとして、現地調査をおこなわずに他者の意見をそのまま報告書に書いたのではないかと疑問を呈した[13]
  4. 2017年6月2日、上智大学での会見で、報告書の作成にあたって情報の取捨選択や解釈について野党や市民団体の見解に偏重した可能性を聞かれると「ない」と否定し、同日の自民党の会合で、共産党の見解との近さを指摘されると「共産党に知り合いはいない」と述べた[14]。また2019年6月にも日本メディアの独立性を懸念する新たな報告書をまとめ、「批判的なジャーナリストへ政府関係者の圧力がある」と指摘し、「政府記者会見における特定のジャーナリストの質問」への政府側対応を圧力の具体例に挙げた。記者・社名は伏せられている[15]
批判に対する反論など
  1. フランスの雑誌[16]ル・ポワン』によると、日本からのケイの報告への批判に対し、ケイが報告にあたり証拠を出しているにもかかわらず、日本の国連大使が「報告は不正確」・「嘘つき」呼ばわりしたことに対し、日本の主張を証明する証拠があるのであれば、それらを提出することが日本に求められているにもかかわらずしていないとしている[17][信頼性要検証]
  2. イギリスの週刊誌「エコノミスト」は、ケイの報告に関する日本の批判について、ほとんどの国は拘束力のない国連特別報告者の提言については受け止めたことを示した上で提言自体には対応せずに流したり無視しているにもかかわらず、日本はジョセフ・カナタチの共謀罪審議の際の提言やマオド・ド・ブーア=ブキッキオの児童売春に関する報告や難民受け入れ人数の少なさに対する国連からの非難の件も含め、提言や批判を攻撃のように受け止めて、公に総理大臣が反論したり、担当大臣が面会を拒否したり、保守系全国新聞が報告草案をリークしたりと、反応が過剰であると論評し、東京大学の情報学教授である林香里は、日本は外国からの批判に対して劣等感があり、外国人が日本の事情を理解していないと反発するばかりで正当に事情を説明することができず、報告したケイを敵のように扱い、「不当な日本批判を正す学者の会」にしても傍観者として非難するだけで、同じ場に立って議論を尽くそうとはしないと講評したと報道している[18]
  3. また、ジャーナリスト保護委員会の常務理事であるジョエル・サイモン(Joel Simon)は、ケイの報告書を引き合いに出し、充分に検証され配慮を持って批判された報告書に対して反発するばかりの現政権(報告時)の元での日本の報道の自由には憂慮すべき現実があるとし、通常ジャーナリストたちが報道の自由を侵害されようとしたら団結して闘うものであるのに、日本の場合は政権への忠誠心が重視され、その上で与えられる特権に安穏としており、このようなメディアの側にも問題があるとしている[19]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ wikipedia日本語版ではカナダの男性声優記事表記。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f David Kaye”. Biography of the Special Rapporteur on freedom of opinion and expression. 国際連合人権高等弁務官事務所. 2017年5月28日閲覧。(英語)
  2. ^ 秘密法廃止へ全国交流/路上の民主主義を大切に/名古屋で「ネットワーク」”. jcp.or.jp. 2019年12月8日閲覧。
  3. ^ 上原亜紀子. “スイスで問われた沖縄における表現の自由と「共謀罪」法への懸念”. SWI swissinfo.ch. 2020年2月1日閲覧。
  4. ^ a b “国連「表現の自由」特別報告者「懸念は深まった」記者クラブ廃止など提言【発言詳報】”. ハフィントンポスト. (2016年4月20日). https://www.huffingtonpost.jp/2016/04/19/freedom-of-expression_n_9728404.html 2017年5月28日閲覧。 
  5. ^ a b c デイヴィト・ケイ 詳細経歴
  6. ^ 日本:国連の人権専門家、報道の独立性に対する重大な脅威を警告”. 国際連合広報センター (2016年4月26日). 2017年7月18日閲覧。
  7. ^ Hungarian Parliament urged by UN expert to reconsider new law targeting Central European University”. Office of the United Nations High Commissioner for Human Rights(国連人権高等弁務官事務所). 2017年7月18日閲覧。
  8. ^ a b UN Experts on Freedom of Expression, Peaceful Assembly and Cultural Rights Speak Out Against Law Targeting CEU”. 中央ヨーロッパ大学 (2017年4月12日). 2017年7月17日閲覧。
  9. ^ Karima Bennoune, Rapporteuse spéciale des Nations Unies dans le domaine des droits culturels
  10. ^ 日本の国益を毀損続ける特別報告者 ケイ氏、国連人権理事会で反米基地運動に言及するも「沖縄には行っていない」 産経新聞 2017年6月14日
  11. ^ 国連人権理事会でのデービッド・ケイ氏12日の発言(要旨) 産経新聞 2017年6月14日
  12. ^ 「一握りの過激論者の影響を受けている」 保守系学者がデービッド・ケイ氏の報告に反論 産経新聞 2017年6月16日
  13. ^ 【特集】あふれるフェイク、真実はどこ?「報道しない自由」の壁 共同通信 2017年7月7日。
  14. ^ デービッド・ケイ氏の背後に“人権団体” 中立・公正に疑問符”. 産経ニュース. 産経新聞社  (2017年6月2日). 2019年6月6日閲覧。
  15. ^ J日本メディアの独立性に懸念=菅官房長官「根拠不明」と反発-国連報告者”. 時事通信   (2019年6月5日). 2019年6月6日閲覧。
  16. ^ フランス人の雑誌好きは世界一 - フランス AFP 2007年03月19日
  17. ^ Japon : Abe dans la tourmente”. Le Point (2017年6月15日). 2017年6月22日閲覧。
  18. ^ Japan gives short shrift to a UN rapporteur looking into press freedom”. 2017-06-10号. エコノミスト (2017年6月8日). 2017年7月17日閲覧。
  19. ^ Will the Japanese media stand up for press freedom?”. コロンビア・ジャーナリズム・レビュー英語版. コロンビア大学 /コロンビア大学ジャーナリズム大学院 (2017年6月9日). 2017年7月19日閲覧。

関連リンク[編集]