コラム:アリババ、株主と当局の板挟みで綱渡り継続か
Yawen Chen
[香港 13日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国の電子商取引最大手・アリババグループは、綱渡りを強いられている。独占禁止法違反の罰金として過去最高額の28億ドルを科せられた影響で、1─3月期の純損益は上場以来、初めての赤字を計上した。
一方、来年度の売上高が30%伸びて1440億ドルに達するとの見通しを示したことは、投資家の不安を和らげるはずだ。ただ、当局はアリババが競争上の武器となるビッグデータを囲い込むことに反対する姿勢をどんどん強めつつある。
張勇(ダニエル・チャン)最高経営責任者(CEO)が率いるアリババは、巨額の罰金という一時的な逆風を何とか乗り切っているように見える。1─3月に中核事業である国内小売りの売上高は、前年比74%増加して190億ドルとなった。ネット注文の急増や最近のスーパーマーケット買収による効果だ。
張氏は、1─3月に8億9000万人に達したアリババ利用者が近く10億人を突破してもおかしくないとの自信も持っている。クラウドコンピューティングと物流部門の急成長も明るい材料で、合計すると売上高全体の14%を占めるまでになった。投資家はこうした状況を見て、アリババが規制面の苦境から総じて立ち直ったと安心するはずだ。
だが、独占禁止当局は先月、アリババに対して罰金支払いのほかに、事業の「完全なる是正」を求め、対応策の自主評価報告を3年間提出するよう命じた。
株価は2月のピークから約2割下落し、リフィニティブのデータによると予想利益に基づく株価収益率(PER)は20倍と、ライバルの京東商城(JDコム)の38倍を大きく下回っている。
他方、事業を普段通りに進めれば、政府からの監視はより厳しくなる恐れがある。習近平国家主席は既に、自由に活動している国内巨大IT企業の頭を抑える取り組みを強化した。一連の反独禁法措置に続き、データ関連の規制に照準を定めたのだ。
これは、アリババにとって不吉な兆候かもしれない。アリババは膨大な利用者データを駆使し、出店者の販売促進に役立てている。創業者の馬雲(ジャック・マー)氏はかつてデータを石油や水にたとえ、「データのマー」というあだ名さえ冠せられた。
アリババは苦難の末に「出るくいは打たれる」という教訓を改めて学んだ。株主と政府の両方を喜ばせるのは、難しくなる一方だろう。
●背景となるニュース
*アリババが13日発表した1-3月期の売上高は1870億元(290億ドル)で、前年同期比64%増加した。リフィニティブがまとめたアナリスト予想平均は1780億元だった。
*純損益は76億元の赤字。独占禁止法違反に問われ、182億元の罰金を支払ったことが主に足を引っ張った。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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