Britannica Japan
2005年版『ブリタニカ国際年鑑』「スポットライト」
走り出したハイブリッド車
ウィリアム・L.ホーシュ(エンサイクロペディア・ブリタニカ編集者)

石油に代表される化石燃料をほしいままに消費することで、人間は文明を発展させてきた。現代社会に不可欠なツールとなった自動車も、化石燃料を消費して環境を汚染しているという側面は否定しきれない。だからこそ今日、高性能かつ環境に配慮した新しいタイプの自動車が注目されている。


 ハイブリッド車は2004年度アカデミー賞の授賞式以来、環境を大切にする車として、にわかにマスコミ報道で取り上げられるようになった。一部の映画スターが授賞式会場に、さっそうとハイブリッド車で乗りつけたことが話題になったのである。大気汚染の問題に加えて、アメリカ国内のガソリン単価が1ガロンあたり2ドルをこえたため、ハイテクを駆使したファッショナブルな解決策として大いに注目されている。
 アメリカではカリフォルニア州を中心として、電気(電池)自動車、ガソリン電気(ハイブリッド)自動車、および燃料電池車の開発が、商業ベースで推進されてきた。1990年にカリフォルニア州大気資源局(CARB)が大気汚染の緩和を目的として、州内でゼロエミッションの小型トラックを売り出すべき時期を定め、民間企業にその遵守を義務づけている。現代のハイブリッド車として最初に登場したのは、1997年に日本で発売されたトヨタ自動車の「プリウス」と1999年発売の本田技研工業の「インサイト」であった。この2車種は、アメリカでも2000年に少数ながら売り出された。2004年型にもなるとアメリカでの販売台数も増えたが、アメリカではガソリン車が年間1700万台売れるのに対して、ハイブリッド車の販売台数は5万台にも達していない。それでも販売代理店によると、注文を受けてから納品までに半年や1年を要する人気商品となった。そこでアメリカの自動車メーカーも、2004年の夏と秋に反撃に出た。フォードは、世界初のハイブリッド・スポーツ・ユーティリティー・ビークル(SUV)「エスケープ」を、ゼネラルモーターズ(GM)は「シボレー・シルベラード」と「GMCシエラ」のハイブリッド版トラックを、ダイムラークライスラーは「ドッジ・ラム」のハイブリッド版トラックを発売した。
 ハイブリッド車は普通、ニッケル水素(NiMH)電池で動く電気モータと、ガソリンを燃料とする小型エンジンの両方から動力を得る。走行条件しだいで、そのどちらかまたは両方が作動する。車が停止してアイドリング中、下り坂を走行中、一定の低速で走行中、といった場合にガソリンのエンジンは停止する(従来のガソリン車と異なり、ハイブリッド車は高速道路よりも市街地でのほうが燃費がいい)。上り坂でアクセル全開で加速、あるいは一定の高速で走行という場合は、精巧な電子制御のトランスミッションを介して二つのエンジンが並列して機能する。減速または制動時には、減速時に生じるエネルギーを回生させて電池の充電に利用する。
 数十年来、内燃機関を使わない車のエンジンについては、大量生産されないまでも、さまざまな試みが重ねられてきた。19世紀末には、電気自動車と蒸気自動車とガソリン自動車が市場で競争していた。1900年にはアメリカ国内で、蒸気自動車1684台、電気自動車1575台、ガソリン自動車963台が製造された。やがて電気自動車がガソリン自動車に負けたのは、蓄電池の重量と性能の面で不利であったこと、特にコストが高くついたことによる。たとえば1912年に、フォードの「T型フォード」の価格は550ドルだったが、電気自動車の価格はたいていその3倍に達していた。1916年に売り出された、初の量産型ハイブリッド車であるガソリン電気自動車「ウッズ」は2650ドルもした。今日のハイブリッド車も、モータが二つあることや、電池を搭載することで、コスト面では相変わらず不利な立場にある。
 しかしメーカー各社は市場占有率の確保を急ぎ、販売価格を2万ドル以内に抑えて従来型の車と競争させようとしている。たとえメーカーによるコスト吸収が行なわれず公的な補助金が撤廃されても、燃費が1リットルあたり20~25キロメートルの範囲に収まることや、クリーンで静かな運転ができること、新しくてスタイリッシュな車体であることが、今後も魅力になるものと期待される。(石川眞弓訳)




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