『ブリタニカ国際大百科事典』が誇る歴史と伝統は、
各時代を彩る偉大な寄稿者によって紡がれ、継承されてきました。
その2世紀あまりの時間をひもとくことで見えるのは、
世界という舞台そのものの「知の歴史」なのかもしれません。
1768
銅版画家アンドルー・ベル、印刷業者コリン・マックファーカー、ウィリアム・スメリーがエディンバラ(スコットランド)にて百科事典の編集・制作を開始。
1771
Encyclopædia Britannica(ブリタニカ百科事典)初版完成。
- ジョン・ロック『人間理解』※没後寄稿
- ベンジャミン・フランクリン『電気』
1797
第3版完成。
ジョージ・ワシントン、アレクサンダー・ハミルトンらがアメリカ初の購買者となる。
1801−1827
第4版『アメリカ』の項に「合衆国憲法」が掲載される。
エディンバラ大学教授M.ネーピアが編集に加わる。
「出版界のナポレオン」と呼ばれた発行人A.コンスタブルが没し、初期のブリタニカが第6版をもって幕を閉じる。
- D.リカード『ファンディング・システム』
- T.R.マルサス『人口』
- ウォルター・スコット『中世ロマンス』『騎士道』『戯曲』
- ジェームス・ミル『政府』ほか12項目
- ウィリアム・ハズリット『美術』ほか3項目
- J.-B.ビオ『電気』『電流』『振り子』
1850
発行人アダム・ブラックが教育への貢献を認められ、イギリス女王より騎士の称号を約束されながらも辞退。
1860
第8版完成。
- D.ブルスター『写真術』
- J.H.バートン『投票』『共産主義』
- ケルビン『電信』
- ロバート・スチーブンソン『鉄橋』
- ウォルター・バジョット『動産銀行』
1875−1889
セント・アンドリュース大学教授T.S.ベインズやウィリアム・R.スミスが編集に携わる。
the Scholar's Edition(学究に愛された版)として名高い第9版完成。
日本橋丸善で輸入販売が開始され、伊藤博文、尾崎行雄、徳富蘆花、犬養毅らが購入。
- P.クロポトキン『アナーキズム』
1889−1911
アメリカ(ニューヨーク)とイギリス(ロンドン)の二大編集部体制を強化。
アメリカへ版権移行。
ケンブリッジ大学出版局が発行母体となり、第11版完成。
- アーサー・S.エディントン『星雲』
- ファン・ヒョーゲル『ヨハネ福音書』
- ジェームズ・H.ジーンズ『分子』
- ジョーゼフ・リスター『粘菌類』
- アーネスト・ラザフォード『放射能』
1926
第1次世界大戦直後、第13版完成。
- マリー・キュリー『ラジウム』
- L.D.トロツキー『レーニン』
- ヘンリー・フォード『大量生産』
- A.アインシュタイン『時空』
- S.フロイト『精神分析』
- G.B.ショー『社会主義-理と展望』
1929−1974
第14版完成。
シカゴ大学が全版権を取得。
Encyclopædia Britannica, Inc.設立。
- G.K.チェスタートン『チャールズ・ディケンズ』
- ジョン・スマッツ『全体論』
- K.スタニスラフスキー『劇場』の一部
- ラルフ・バンチ『モザンビーク』ほか3項目の一部
1975
15年の編集期間を経て、第15版完成。
日本版『ブリタニカ国際大百科事典』初版刊行。
日本版『ブリタニカ国際年鑑』刊行開始。
- アルフレッド・ヒッチコック『映画』
- ジョン・F・ケネディ『エルズワース』
- 遠藤周作『サド』
- 江藤淳『夏目漱石』
- 岡本太郎『仮面』
- A.J.トインビー『カエサル』
- ポール・A.サミュエルソン『福祉経済』
- 竹内均『地球』
1990−2000
CD-ROM版百科事典 Britannica CD 完成。
インターネット版百科事典 Britannica Online サービス開始。
2001
15万項目収録の日本版 CD-ROM『ブリタニカ国際大百科事典 Quick Search Version』、LAN版とともに完成。
2006
日本版『ブリタニカ国際大百科事典』のオンラインサービス「ブリタニカ・オンライン・ジャパン」サービス開始。
2012−Beyond
Encyclopædia Britannica は第15版をもって書籍版での発行・販売を終了。電子版のみとなった。
過去の記事を読んでみよう!
英語で書かれた最古の百科事典であるブリタニカには、
当時の時代背景をうつした興味深い項目がいくつもあります。
今日ではあたりまえに知っているような事柄も、その昔には別の解釈があったかもしれません。
時代を感じさせる、貴重なその一編にふれてみませんか?
タバコ
「聖なる薬草」は毒か薬か
健康に悪影響を及ぼすことが指摘され、現代社会では問題視されているタバコ(喫煙)ですが、かつて頭痛や鼻炎の治療に役立つと考えられていた時代がありました。化学的な研究が進む前の時代の日常生活をうつした貴重な資料ともいえるでしょう。
カリフォルニア
カリフォルニアが島だったとき
アメリカ合衆国とメキシコの国境から延びるカリフォルニア半島。初版では「半島か島かは定かではない」とされていましたが、第2版では「地続きの半島だとわかった」との記載があります。当時のブリタニカが編集されていた地(スコットランド)から遠く離れた未開の地が、実は…。知見が科学的に更新されていく様子が見てとれます。
バスティーユ
バスティーユが陥落した
フランス革命の出発点となった、1789年のフランス・パリの城塞「バスティーユ」の陥落。そのときブリタニカは「バスティーユ」「フランス史」という項目をアップデートしました。今では教科書で知るような歴史的大事件をリアルタイムで経験したブリタニカが、当時のことを振り返っています。